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『色彩を持たない 多崎つくると、彼の巡礼の年』 by 村上春樹

『色彩を持たない 多崎つくると、彼の巡礼の年』 by 村上春樹_d0228130_115260.jpg人は、どうして、便利に向かおうとするんだろう?
それって、ある意味、手抜き?だよね?
手間かけて美味しくなるものを、便利さにかまけて、ま、少しくらい美味しくなくても楽になるんだから・・・っていうような?

じゃ、楽ってなんなの?って考えた時、それは、必ずしも気持ちの「楽しさ」や「豊かさ」とイコールではないんだよね・・・

楽はむしろ「便利」に近い。
そして、便利になって、時間に余裕ができると、そこには新たな「楽」が入り込む。
そして、日常の隙間を埋めていく。

その結果どうなるのかというと、どんどん「余裕」がなくなっていくのだよ。
なんの?
人としての「余裕」?みたいなもの?

最近よく思う。
SNSをしてて・・・
ホントに便利になったと思う反面、会ってしかできなかったことが会わずにできるようになった反面、人はものすごい膨大な損失をしていると・・・

その損失の一つは、「傷ついた結果を修復する努力を怠ることで、心を鍛えられないこと」。
ま、当たり前といや当たり前だけど。
勝手にに切って、勝手に逃げる。ちょっとばかし嫌だった気分から・・・。
相手の気持ちなんておかまいなしに、なんかが気にくわないからって、その理由も告げずに、それまで普通にやりとりしてた人を切る。

SNSとは、いわば、そんだけのもんだといえばそんだけのもんだ。
でも、そんだけのもんだと思っているんなら、なおさら、面と向かって乗り越えないと・・・
って、なんで今そんなに熱く語っているのかっつーと、ある本に刺激されたから。

遅ればせながら読んだ、村上春樹の『色彩を持たない 多崎つくると、彼の巡礼の年』。
このストーリーは、ものすごく多重性に富んでいて、読む人によってそのどこのポイントに自分を重ねるかで、全然捉え方が違ってくるはず。
これを読んで、私がまず思ったのは、自分は、自分発信の一方向からしか人生をとらえてはいないんだなってことだ。

たまたま、SNSで、なにが原因かわからず私との関係を一方的に切られたすぐあとに読んだから。
けっこう悩んだ。
直接本人に問いただすべきかどうか?ってね。

いったん思った、
そんなやつはほっとこうってね。
そういうことするやつは所詮、そんなけの人間なんだってね。

でも、ちょっと考えが変わった。
もし、その相手に会える自然な機会があるのなら、それはそれで、堂々と「その事」について話し合おうって。
もしかして、ほんとうにちょっとした行き違いか誤解でお互いに疑心暗鬼になっているのかもしれないし、そこにはものすごい深い事情があるのかもしれないし・・・

村上春樹は、ノーベル文学賞に一番近い作家だ。
でも、今回の『色彩を持たない 多崎つくると、 彼の巡礼の年』をもし、私の受け持つカルチャーセンターの生徒が自分も作品として提出してきたら、この作品そのものは私の指導レベル的にはツッコミどころ満載だった。

けれども、ノーベル賞レベルの作家としての力量は、基本、そんなところには有り得ないのだろうな。
なんせ、曲がりなりにも物書きである人間の考え方に影響を及ぼし、その行動の方向性を決定したのだ。
文章で・・・文字で・・・

これって、まさに、ゴルフ練習場のレッスンプロと、タイガーウッズの違いだね・・・てたとえはちょっとわかりにくかもしれないけど、ま、ようするに、ノーベル文学賞ってレベルの作品は、既存の概念で批評、論評することができないし、読書感想文が書けない・・・ようするに、文学でなくて、人に魂の根源に訴えかけてくる「芸術」
に近いものなんだろうね。

うん・・・「ノーベル賞」ってのはどの分野にも「超芸術」に送られる賞なんだよ。
だから、凡人には誰にもわからないし、簡単に理解なんてできないんだ。

・・・あ、なら、審査員ってもっとすごいじゃん005.gif

by mizunomari | 2013-09-27 01:21 | デイリーコラム | Comments(2)  

Commented by 風屋 at 2013-09-27 08:10 x
なるほど、確かにリアルコミュニケーションが苦手な現代人にSNSはうまく合ってるというか、マッチするのかも。顔を合わせなくても人間関係を簡単に築け、解消できる。自分は傷つかずに(匿名で)相手を傷つけることもできる。
でもね、たかがそれだけのことだとおもうんですよ。ワタシの場合はSNSの友人もリアルで友人って人が多いから、何となく友達同士のコミュニケーションとしてSNSを使ってますが、楽できる(重くない)コミュニケーションツールという側面もわからないじゃない。でもデジタルのみの「友人」は「友達」ですら無いと認識しているつもりです。去る者は追わず。まぁこれも「楽」ですが。
ネット上でネトウヨに論戦仕掛けたこともありますが、彼らにしてみれば仲良しサイトに乱入してきたウザいアナログオヤジなんでしょうね 笑。
しかしやっぱり読み方違うわぁ(^_^;
Commented by mizunomari at 2013-09-27 08:57
元々、心を許しあえていると思っていた人とSNSを始めて、つい油断しちゃうことってあるよね。
相手は私のことわかってくれてるはず・・・っていう思い込みで言葉足らずになってしまうってこと。
その辺が一番危ないよね。
ま、ともかくこの小説は、パイみたいに、いろいろな側面や要素が幾重にっも重なってて、切り口によっては、全然違う捉え方ができる。
ずるいよね( ̄▽ ̄)

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